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生きがいチャート

時間管理と人生の充実のための技法

この技法は、名前のとおり日本語の「生きがい」をもとにしたもので、近年では「自分の人生をあらためて見つめ直す方法」として、欧米を中心によく使われます。「生きがい」の定義はいくつも存在しますが、とりあえずここでは「自分のモチベーションをかき立て、強く没頭させてくれる行動や目標」ぐらいに考えてください。

生きがいの重要性

 欧米で「生きがい」が注目され始めた理由は簡単で、ここ十数年の研究により、「生きがい」のメリットが何度も確認されてきたからです。具体的には、生きがいの感覚が強い人ほどストレスに強く、免疫システムが健全で寿命が長く、人生の幸福度も高いことがわかっており、いまも世界で研究が進められています。

生きがいと時間の関係

 時間の感覚と「生きがい」にはなんの関係もなさそうですが、実は効率と生産の罠から逃れるためには、この考え方が非常に役立つことがわかってきました。その理由は大きく2つです。

❶時間を忘れさせる ❷重要なことの判断がつく

1. 時間を忘れさせる効果

 まず重要なのが、「生きがい」による時間の喪失作用です。脳が没頭状態に入ったときは、ただ目の前の作業だけが意識されるため、時間の経過には注意が向かいません。おかげで効率や生産といった思考から意識がそれ、時間管理のネガティブな作用にも囚われずに済むわけです。 

 

2. 重要度の判断

 もうひとつ「生きがい」の効果として重要なのは、そのタスクの重要度が見極めやすくなる点です。「生きがい」の考え方は、疲れ切った脳の情報選択機能をサポートする働きを持ちます。あなたが心から没頭できる活動をつねに念頭に置いておけば、新たな情報を選ばねばならない状況になっても、「これは自分の生きがいにつながるか?」や「このデータを自分の生きがいに活かせるか?」と考えることで、どうでもよいものと本当に重要なものを選りわけられるからです。  なにごとにおいても、正確な判断をするには明確な基準が欠かせません。大量の情報にとまどう脳に大きな道筋を示してくれるのも、このトレーニングの大きな魅力です。

生きがいチャートの実践

 それでは、あなたなりの「生きがい」を見つけてみましょう。

ステップ❶ チャートに記入する

「生きがいチャート」は、次図に記入しながら進めていきます。まずは4つのサークルの意味を押さえておきましょう。

 

❶自分が楽しいこと:あなたがいくらやっても飽きず、やればやるほど元気が出るような活動のことです

❷世間が必要とすること:身の回りの人や世間一般が求めるようなニーズがあるかどうかを意味します

❸世間から金銭がもらえること:その活動やスキルにより、誰かから金銭をもらえるかどうかを意味します

❹自分が得意なこと:あなたが特に苦労を感じずに、他人よりもうまくできる活動を意味します

 

要するに、このトレーニングにおける「生きがい」とは、あなたが心から楽しむことができ、なおかつ大多数の人よりも上手で、さらに世間からの需要と必要性もある活動のことです。どの要素が欠けても「生きがい」は生まれず、強いモチベーションもわきにくくなります。  実際にワークを行う際は、以下の質問について考えながら、思いついた言葉やフレーズ、アイデアを該当する欄に記入してください。

【サークル1】

自分が楽しいこと  このサークルには、あなたが心から楽しめるアクティビティを書き込みます。あなたが純粋に楽しいと感じるものはなんでしょうか? 仕事、家族、ボランティア、趣味など、人生のあらゆる場面を想像し、自分が心から楽しめることを思い浮かべてください。記入する内容は、ガーデニング、旅行、アートなど、どんなものでも構いません。思いついた答えをチャートの「自分が楽しいこと」に記入しましょう。

いまいち答えが思いつかないときは、以下の質問の答えを考えてみてください。

◉私が飽きのこない活動、人、場所はなんだろうか?

◉時間を忘れてやってしまうことはなんだろうか?

◉もし経済的に安定していたら、自分の時間を何に使うだろうか?

◉お金がもらえなくてもやり続けられることはなんだろうか?

◉何時間でも話し続けられそうなことはないだろうか?

 

【サークル2】

世間が必要とすること  人間は社会的な動物であり、日々の生きがいを感じるためには、「私は他の誰かに必要とされている」や「自分は世の中の役に立っている」という実感を抱く必要があります。そこで、この2番めのサークルでは「私が世間の役に立つことはなんだろうか?」という質問の答えを記入しましょう。  書き込む内容はどのようなものでも構わず、「仕事を通して顧客の暮らしを豊かにする」や「困った人の話を根気よく聞く」といったように、あなたのスキルや能力で他の人が喜びそうなことを想像してみてください。

いまいち答えが思いつかないときは、以下の質問の答えを考えましょう。

◉身近な人々に感謝された経験はないだろうか?

◉私が持っているスキルで需要が高いものを3つ挙げたらどうなるだろうか?

◉他人に教えられること、他人を助けられることはないだろうか?

◉社会の問題を少しでも解決できそうなスキルは持っていないだろうか?

◉どうすれば自分の友人や家族、身近なコミュニティに貢献できるだろうか?

 

【サークル3】

世間から金銭がもらえること

いかに自分が楽しめて世間から求められることをしようが、そこに金銭が発生しなければ長くは続けられません。「生きがい」をライフスタイルに組み込むには、どうしても金銭的な報酬が必要です。

そこで、この3番めのサークルには、あなたが持っているスキルや能力の中で、金銭が発生しそうなものを書き込みましょう。「自分にはそんなスキルがない……」と思う人もいるかもしれませんが、ここに記入する内容は、統計や語学のように専門的なスキルだけでなく、「人当たりがよい」や「他人をほめるのがうまい」などのピープルスキルも該当します。

いまいち答えが思いつかないときは、以下の質問の答えを考えてみてください。

◉アルバイトや仕事でほめられたことはないだろうか?

◉仕事で役に立ったスキルはなんだろうか?

◉これまで何に対してお金をもらったことがあるだろうか?

◉人々が喜んでお金を払うようなスキルや能力はないだろうか?

◉今の自分が必要な収入を得られるような活動はないだろうか?

 

【サークル4】

自分が得意なこと

最後のサークルには、あなたが得意なことを書き込みます。金銭報酬が発生するかどうかにはこだわらず、シンプルに自分の強みについて思案しましょう。いまいち答えが思いつかないときは、以下の質問の答えを考えてみてください。

◉これまでに100時間以上の練習や学習をしたスキルや知識はないだろうか?

◉努力せずやっているのに他人からほめられることはないだろうか?

◉もし他の人に何かを教えるとしたら、何を教えられるだろうか?

◉職場やコミュニティで他人より優れていると感じるのはどんな活動だろうか?

◉過去の成果であなたが誇りに思うものごとはなんだろうか?

 

ステップ❷

重複する回答を見つける

 

このステップでは、先ほど書き込んだチャートを見て、重なり合った回答がないかを探していきます。たとえば、あなたが「自分が楽しいこと」のエリアに「教えることが好き」と書き込み、同時に「世間が必要とすること」のエリアに「知識を伝えたら喜ばれた」と書き込んだなら、両者は重なり合っていると判断できます。このように、4つのサークルの中で答えがかぶったものを探しましょう。  続いて2つ以上の円に当てはまる答えが見つかったら、それぞれを「使命」「職業」「専門」「情熱」のエリアに書き直してください。たとえば、「自分が楽しいこと」と「世間が必要とすること」という2つのエリアに重なる回答があった場合は、それを「使命」のエリアに移動。「自分が得意なこと」と「世間から金銭がもらえること」が重なっていたら、その回答は「専門」に移しましょう。

 

これら4つの重複エリアは、それぞれ次の特徴を持っています。

❶情熱=自分が楽しいこと+自分が得意なこと 「自分が楽しいこと」と「自分が得意なこと」が重なった活動には「情熱」が生まれやすく、「満足感を得やすいが、世の中への貢献を感じにくい」や「作業のモチベーションは高いが、金銭報酬が得られないので持続性がない」といった特徴があります。

❷使命=自分が楽しいこと+世間が必要とすること 「自分が楽しいこと」の中に「世間が必要とすること」が重なった活動には「使命」が生まれやすく、人生に喜びと充実感を感じられるものの、収入や経済的な安定性がないという特徴があります。

❸職業=世間から金銭がもらえること+世間が必要とすること 「世間から金銭がもらえること」と「世間が必要とすること」が重なった活動には「職業」が生まれやすく、生活に必要な収入は得られるけれど、自分の行動に愛着が生まれず空虚な気分になりやすい傾向があります。

❹専門=自分が得意なこと+世間から金銭がもらえること 「自分が得意なこと」と「世間から金銭がもらえること」が重なった活動には「専門」が生まれやすく、作業の達成感は得やすいが、他者への貢献が少ないため、仕事や努力がつまらなく感じられやすい特徴があります。

 

以上をふまえたうえで、あなたがリストアップした活動の中から、サークルが重なり合うものを探しましょう。最終的に、4つのサークルすべてに当てはまる活動があったら、それをチャートの中央に記入してください。それこそが、あなたに「生きがい」をもたらす活動です。

 

ステップ❸ 生きがいを掘る

 

ステップ2まで作業を進めても、生きがいが見つからなかった人もいるでしょう。ところどころにサークルが重なる活動は見つかったものの、4つすべてを満たすものがないケースです。  このような場合は、「生きがいを生み出すために何ができるか?」を考える必要が出てきます。具体的には、ステップ2であなたが記入した回答から2~3つのサークルに当てはまった活動をピックアップし、以下のように考えてみてください。

【「自分が楽しいこと」が足りない場合】

その活動に「自分が楽しいこと」が不足しているときは、次の質問の答えを考えましょう。

◉この活動のどの部分が楽しめないのだろうか? その理由はなんだろうか?

◉この活動をもっと楽しくする方法はないだろうか?

◉この活動に、少しでも楽しさを感じられる側面はないだろうか? その楽しさを広げられないだろうか?

◉この活動に興味が持てる側面はないだろうか? もっと知りたいと思えるところはないだろうか?

◉この活動を、あなたが人として成長するために役立てられないだろうか?

 

【「自分が得意なこと」が足りない場合】

その活動に「自分が得意なこと」が不足しているときは、次の質問の答えを考えましょう。

◉自分がこの活動に向いていないと思うのはなぜだろうか? ◉自分の設定した基準が高すぎる可能性はないだろうか?

◉自分はこの活動に必要なスキルを持っているだろうか? もし持っているなら、そのスキルを高めるために何ができるだろうか? もし持っていないなら、そのスキルを学ぶために何ができるだろうか?

◉この活動が得意な人たちは、どのようなスキルや強みを持っているだろうか? そのスキルのうち私はどれを持っているだろうか?

◉この活動について、よいメンターになってくれる人はいないだろうか?

 

【「世間から金銭がもらえること」が足りない場合】

その活動に「世間から金銭がもらえること」が不足しているときは、次の質問の答えを考えましょう。

◉いまこの活動に金銭が発生していない主な理由は何だろうか? 金銭を発生させるにはどうすればいいだろうか?

◉私はこの活動を行うのに十分なスキルを持っているだろうか? もしスキルがないのであれば、どのようにパフォーマンスを向上させれば金銭が発生するだろうか?

◉他の人たちは、この活動でどのように金銭を稼いでいるのだろうか? 似たような活動で収入を得られるものはないだろうか?

◉仕事で発生する収入のほかに、どうすればこの活動から金銭を得ることができるだろうか?

◉自分が楽しめる活動によって利益を得る方法はないだろうか?

 

【「世間が必要とすること」が足りない場合】

その活動に「世間が必要とすること」が不足しているときは、次の質問の答えを考えましょう。

◉自分の活動を、他の人にも価値があると思わせる方法はあるだろうか?

◉自分の活動を、世界に貢献できる内容に変えられないだろうか?

◉自分の身近な人々(友人、家族、仲間)は何を必要としているだろうか? この活動を使って、彼らのニーズに応えられないだろうか?

◉自分の活動を他の人にもっと伝えるために、どのような方法があるだろうか?

◉この活動をオンラインで行い、誰かのニーズに貢献できないだろうか?

 

いったんあなただけの「生きがい」が見つかったら、あとはその活動に使う時間を意識して増やすだけです。  仕事の合間、寝る前の1時間、起床後の30分など、取り組むタイミングはいつでも構いません。「生きがい」の実践で時間を忘れる体験が増えるほど、あなたの脳は効率と生産性から切り離された感覚を学習し、自分の人生にとって重要な情報を優先して取り込むように意識が変わっていきます。

また、「生きがい」は人生のさまざまな領域から探し出すことができ、ある人は人間関係の中に見出すでしょうし、ある人は仕事に見出すかもしれず、またある人は宗教や趣味などに見出すはずです。 「生きがい」の種はあらゆるシーンに眠っているので、もし1回の作業で見つけられなかった場合は、ぜひ人生のいろいろなエリアを探索してみてください。